2019年参院選に向けた各党の歯科医療政策

 「保険で良い歯科医療を」全国連絡会(以下「全国連絡会」)は7月の参議院選挙に向けて、主要国政政党への歯科医療政策アンケートを実施しました。5月末を期日として、立憲、国民、共産、維新、社民の5党から回答が寄せられ、自民、公明からは回答がありませんでした。寄せられた回答を紹介します。

1、参議院選挙における政策に歯科医療政策はありますか
立憲 国民 共産 維新 社民
ある:
○生涯健康な歯を持つことができるよう、口腔ケアをはじめ歯科医療の充実に取り組みます。
〇歯科口腔保健法に基づき、口腔ケアをはじめとする生活を支える歯科医療を充実し、歯科領域でもチーム医療を推進します。
〇地域包括ケアシステムにおける口腔ケアや歯科治療を明確に位置付けます。
○歯科技工士の賃金・労働時間等の就労環境を改善し、「製作技工に要する費用」の考え方を明確にします。歯科衛生士については、健康寿命に極めて重要な口腔ケアの担い手としての働く場を拡大する等、就労環境を改善すると同時に、復職支援を進めます。
○生涯健康な歯を持つことができるよう、乳児から高齢者まで切れ目ない定期歯科健診の普及促進、高齢者・障がい者の地域生活を支える在宅歯科診療・障がい者歯科医療の充実を図ります。また、虐待の早期発見にもつながるよう小児歯科健診の充実に取り組みます。
ある:現在、政策集を作成中 ある:発表後、該当部分を送付いたします ない その他:参議院選挙に向けた党の政策は現在作成中です

2、いつでも、どこでも、だれもが、お金の心配をせず「保険で良い歯科医療」が受けられるための施策について
(1)窓口負担割合を引き下げることについて
立憲 国民 共産 維新 社民
その他:地域包括ケアシステムにおける口腔ケアや歯科治療を明確に位置付けます。低所得者層に対しては、経済的理由から受診を控えることがないよう支援策を検討すべきと考えます。 その他:誰もが必要な歯科医療を受けられるようにすべきです。ただし、窓口負担割合を引き下げることについては、負担軽減の必要性、財源確保の方法の両面から診療に検討すべき課題であると認識しています。 賛成:「現役世代=3割、高齢世代=1~3割(70~74歳は2~3割)」という高すぎる窓口負担が国民の家計を圧迫し、受診抑制を引き起こしています。とくに、歯科の受診抑制は深刻で、生活困窮世帯の子どもの口腔の健康破壊が、「子どもの貧困」のあらわれとして社会問題化しています。  日本共産党は、子どもの医療費を無料化する国の制度をすみやかにつくることを参議院選挙の重点公約の一つにかかげ、現役世代の窓口負担を2割に、高齢者の窓口負担を1割に引き下げることを提案しています。将来的には、他の先進国と同じ“窓口負担ゼロ”の医療制度をめざします。 その他:窓口負担割合は、所得に応じて設定すべきである。 その他:窓口負担は、まず子どもの医療費無料化について全国一律の制度を目指します。
(2)保険のきく歯科治療の範囲を広げることについて
立憲 国民 共産 維新 社民
(1)とおなじ その他:保険のきく歯科治療の範囲は、誰もが必要な歯科医療を受けられるようにする観点と医療保険財政に与える影響とバランスを考慮して検討すべきです。 賛成:ご指摘のとおり、歯科では、実績・効果があって、広く用いられている治療法が保険外にとどめられ、患者は保険だけでは必要な治療が受けられず、高い自費負担に苦しめられています。国民の健康をまもるため、歯科の保険診療を抜本的に拡充し、「保険で良い歯科治療」を実現することが必要です。 その他:適切な見直しは必要である。 賛成:健康格差を是正する観点から、保険適用の拡大を求めます。

3.歯科健診の充実について
立憲 国民 共産 維新 社民
生涯健康な歯を持つことができるよう、乳児から高齢者まで切れ目ない定期歯科健診の普及促進、高齢者・障がい者の地域生活を支える在宅歯科診療・障がい者歯科医療の充実を図ります。また、虐待の早期発見にもつながるよう小児歯科健診の充実に取り組みます。 ○旧民主党政権下で成立させた歯科口腔保健法に基づき、生活を支える歯科医療を充実し、歯科領域でもチーム医療を推進すべきです。 ○生涯健康な歯を持つことができるよう、乳児から高齢者まで切れ目ない定期歯科健診の普及促進、高齢者・障がい者の地域生活を支える在宅歯科診療・障がい者歯科医療の充実を図るべきです。また、虐待の早期発見につながるよう小児歯科検診の充実に取り組むべきです。 歯科疾患の早期発見・早期治療の重要性が叫ばれているにもかかわらず、現行では、学校健診以外では歯科が義務化されておらず、実施している保険者・事業主は限られています。成人に対する歯科健診の促進、健診内容の充実、自己負担の無料化、健診の実施主体への公的支援など、国が努力していくことが重要です。歯科健診の受診率向上には、口腔の健康に対する国民の認識の啓発や、“医者に行く時間もとれない”労働条件の改善も必要です。地元の歯科医と協力しながらの地域ぐるみの啓発活動や、長時間労働の是正、中小企業への支援など社会・経済の改革を進めます。 歯科の重要性は認知が低いので、周知から始める。 歯科健診とあわせて、生活習慣病予防などの予防保健や介護などとの連携を強化し、トータルで地域住民の健康と生活を守ることが必要と考えます。

4.歯科技工士の処遇改善のための施策について
立憲 国民 共産 維新 社民
歯科技工士の賃金・労働時間等の就労環境を改善し、「製作技工に要する費用」の考え方を明確にします。 歯科技工士の賃金、労働時間等の就労環境を改善し、「製作技工に要する費用」の考え方を明確にすべきです。 若い歯科技工士の離職の増大や歯科技工士学校の志願者の激減は、低すぎる診療報酬による歯科診療所の経営難、歯科技工士の技術・労働に対する低評価、安価な海外技工物の大量輸入による国内技工所の廃業など、歯科医療をめぐるさまざまな矛盾によるものと考えます。  歯科技工士が安心して仕事を継続でき、歯科医と協力して「良い入れ歯」を保険で提供できるよう、歯科技工物に対する診療報酬の改善を進めます。低すぎる補綴関連の報酬を抜本的に引き上げ、「混合診療」となっている補綴・欠損の保険移行を推進します。現在、保険で給付されている補綴物の保険給付外しに反対します。ご指摘の「労働時間と原価計算に基づく製作技工・保険点数の決定」など、歯科技工士の技能と労働を正当に評価する報酬への見直しを進めます。歯科技工士に適切な技術料が支払われるような取引ルールの確立も必要と考えます。海外技工物の輸入・使用・安全性の実態を調査し、材料・製作者・技工所などの基準をもうけて規制を行うとともに、国内技工物にかかわる報酬を引き上げます。 立場が弱い技工士を保護するために法的拘束力があるルールの確立が必要である。 ご指摘のとおり、若い歯科技工士が低賃金や長時間労働を強いられるようなことがあってはなりません。補綴治療の抜本的な点数の引き上げなどは急務と考えます。

5.歯科衛生士確保のための施策について
立憲 国民 共産 維新 社民
歯科衛生士については、健康寿命に極めて重要な口腔ケアの担い手としての働く場を拡大する等、就労環境を改善すると同時に、復職支援を進めます。 歯科衛生士については、口腔ケアの担い手としての働く場を拡大する等、就労環境を改善すると同時に、復職支援を進めるべきです。 高齢者のフレイルを防止し、口で咀嚼して物を食べ続けられるようにすることが、全身状態の改善や肺炎防止に効果があることは、医科や介護分野もふくめた共通の認識となっています。ご指摘のとおり、超高齢社会のなかで、専門的口腔ケアの担い手である歯科衛生士の役割はますます重要です。  歯科診療所が歯科衛生士を雇えるよう、歯科診療報酬全体を抜本的に増額するとともに、歯科衛生士の専門的な技能・労働を正当に評価する報酬体系へと見直していきます。高齢化による歯科需要の増大に対応し、歯科医療・口腔ケアの専門職をどれだけ確保するか、国として計画を持ちながら、病院・施設・事業所なども含めた歯科衛生士の配置に対する公的支援を行ないます。 診療報酬の適正化が必要である。 有資格者の多くが未就業という状況は、保育士の現状とも重なります。抜本的な待遇改善を図るなかで、人材育成と人材確保を進めなければならないと考えます。

6.診療報酬の大幅引き上げ、歯科口腔保健関連予算の増額について
立憲 国民 共産 維新 社民
医療と介護の需要が増加する中、地域医療を支える観点から診療報酬の適正な改定を進めます。誰もが必要な医療を受けられるようにするため、今後も医療の技術や医学管理を評価する観点から、引き続き、診療報酬の引き上げに取り組み、医療の質の改善や効率化を進めていきます。 誰もが必要な歯科医療を受けられるようにするため、今後も医療の技術や医学管理を評価する観点から、診療報酬の引き上げに取り組むべきです。  この間、口腔の状態の改善が、全身の健康状態の改善、記憶・学習能力の向上、認知症の予防、病気の早期治癒などに大きく貢献することが、明らかとなっています。ところが、国民医療費に占める歯科診療の割合は7%弱に過ぎません。 歯科医療従事者の粘り強い運動や国民の要求を受け、歯科診療報酬の一定の改善が行われていますが、基本技術料の評価が低く、新しい技術がなかなか保険適用されないという状況は抜本的には改善されていません。そのなかで、少なくない歯科医、歯科診療所が、「ワーキングプア」を呼ばれるような経営難にあえいでいます。  日本共産党は、口腔の健康の確保・改善をつうじて国民全体の健康の保持・向上を推進し、「保険で良い歯科治療」を実現する立場で、歯科診療報酬の抜本的な増額と改革、歯科医療の充実に向けた支援を進めます。  初診料・再診料の水準を抜本的に引き上げ、医科・歯科間格差を是正します。包括的・成功報酬型の診療報酬を撤廃し、治療行為を適正に評価する報酬に改定します。国民の需要の高まりや、技術の進歩に対応し、保険治療の大幅な拡大と保険外治療の解消を図ります。歯科技工士や歯科衛生士の役割を適正に評価する診療報酬にあらためます。近年、歯科診療報酬には、設備投資や人員の確保を要件とした施設基準が導入されていますが、その結果、届出の要件を満たすことが困難な零細経営の診療所が“淘汰”される事態も起こってきています。すべての歯科診療所で医療安全が確保され、質の高い治療ができるよう、“線引き”による傾斜配分ではなく、歯科保険医療全体の底上げと歯科医療機関への支援強化を図ります。 適切な見直しは必要である。 安倍内閣は、社会保障費の自然増削減、医療制度の改悪を繰り返してきました。社民党は、地域で不安を抱える住民の方々の声を丁寧に政策に反映し、国に転換を求めていきます。

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